月は嫌いだ
そういえば、去年の誕生日は満月だった。
ベランダに出て煙草を吸ってみると、今日も月が輝いているのが見えた。
満月を見ていると、どうしてもあの有名な言葉が浮かんで憂鬱になる。私には、誰も愛してくれる人なんていないから。
月は眩しい。夜空に無数にきらきらと輝く星々が見えなくなってしまうのも、あまりにも明るい月が、星空をかすめてしまうから。
せめて月がもう少し大きかったり、地球に近い場所にあったらいいのに。昼間でも地球が月の影に入って、1日に2回以上夜が訪れるかもしれない。そして、きっと間近で見る三日月は、さぞ綺麗で美しいだろう。
しかし、無数の星々が光り輝く星空を見ていても、自分にはそのような人生を送ることはきっと無理なんだろうな、と思って苦しくなる。
毎日見ているのに。夜道を優しく照らしてくれるのに。私の行く先を導いてくれるのに。温かく見守ってくれているのに。どこまでもついて来るのに。すぐそばにある気がするのに。綺麗なのに。きっと、あなたにも私が見えているはずなのに。
必死に手を伸ばしても、声を張り上げても、届かない。触れられやしない。自分の意思で動かせるわけでもない。気がついたら見失ってしまう。なのに、欲しがってしまう。
結局は、何を見ても憂鬱なんだろうと思った。